獣医輸液研究会会長挨拶
会長 田口 清 
(酪農学園大学 教授)

 本研究会は、産業動物における輸液療法の知識と技術の研鑚と啓蒙を目的として設立されました。輸液療法は産業動物獣医療においても重要なものと認められるようになったからです。それは病気の動物の水・電解質・酸塩基平衡などの病状を客観的に捉え、これを補正することによって動物を救うことができることを臨床家が身をもって経験したことから出発しました。このことは臨床症状に基づく脱水症評価の理論や、従来には容易に実施することができなかった血液検査が普及したばかりでなく、フィールドの牛馬の傍らでさえリアルタイムに測定できるまでに開発された機器のおかげであることも見逃せません。しかし、検査と検査器械の普及ばかりでなく、輸液の理論と経験に関する多くの教科書や論文が出版されているにもかかわらず、獣医大学における輸液教育は依然として不完全ですし、フィールドに出た若い獣医師の輸液の知識も不足しています。また、フィールドにおいて適切な輸液が行われないために死んで行く動物もまだ多く存在するわけです。

 一方、フィールドでの輸液の問題はしばしば産業動物での輸液の難しさに起因します。たとえば、長い時間をかけて静脈内輸液を行うためにどのように保定し、だれがそれを監視するかなどといったことも問題となります。また産業動物ではコストと効果の問題も重要です。本研究会では輸液のあらゆる問題を臨床家の視点に立って研究する研究会であるということもできます。それは、臨床的に明確でない事柄について、われわれ臨床家が取るべき最も正当な姿勢は、明確でない事柄を研究することだからです。

 フィールドの場面では、常に臨床病理学的なパラメータは取れませんが、むしろ逆に実際に実施した輸液の結果から有効な輸液を証明する臨床疫学的な方法も今後臨床家の重要な方法になるはずです。たとえば、輸液の臨床的結果に基づいて新生子牛の下痢症に対する輸液のクリニカルパスを作れれば、治療の質、コスト、労力を改善する最善の標準的方法を見出すことになるでしょう。このように本研究会では、産業動物獣医療の目的にかなった輸液の新しい考えや方法について研究することも重要な目的です。

 輸液をしない臨床家は多分いないわけですから、どなたでも本研究会の情報の発信者になり、他の臨床家に有用な情報を与えることができます。本研究会が臨床的視点とフィールドでの仕事を最重視し、輸液に関する多くの議論と情報交換の場となること期待します。21世紀に発足する最も新しい研究会ですから、研究会のあり方や運営についてもITを利用した新しい発想と方法を模索して参ります。多くの方々のご提言をいただければ幸いです。


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